濃度だけではわからない

先日行われた三条市と柏崎市の震災瓦礫試験焼却で、焼却灰の放射性セシウム濃度が発表されました。

三条市で24.4ベクレル/kg
柏崎市で33.4ベクレル/kg

いずれも新潟5市共通の受け入れ基準である100ベクレル/kgを下回りました。

この結果を受け、新聞・テレビなどほとんどのメディアでは「基準値以下でした」と報じているのですが、

ちょっと待って。

「基準値以下でした」という表現を聞いてほとんどの方は「=安全」と解釈するのではないかと思いますが、焼却灰のセシウム濃度測定では正に濃度の数値がわかっただけで、焼却の安全性を証明する材料にはなりません。

灰の濃度では煙突から漏れたか漏れてないかわからない!!

まして試験焼却は一般ゴミとの混焼ですから、灰が基準値以下になるのは試験前から容易に想像できること。例えば三条市では一般ゴミ247トンに瓦礫13トンを混ぜて燃やしてますので瓦礫は全体の5%に過ぎず、仮に瓦礫100%で燃やしたなら当然もっと高い数値が出ます。要はキロ当りの濃度が違うだけで持ち込まれたセシウムの総量は変わらず、薄いのがいっぱいか、濃いのがちょっとかの違い。244ベクレル/kgの灰が1kgと24.4ベクレル/kgの灰が10kgでは結局セシウムの量が同じなのは子供でもわかりますよね。しかもこれが実際にはキロどころかトンでの話ですからね。本来であれば一般ゴミの焼却前セシウム濃度も合わせて測定し、混焼の総量260トンで総ベクレルがいくつ、灰になって総量が何トンになったのか等も合わせて公表しないと意味がありません。焼却によって重量で1/5程度(体積では1/20程度)に減量されるそうなので(違ってたら失礼)、その通りだとすれば270トンが1/5で54トン、全て24.4ベクレル/kgとすれば焼却灰に含まれるセシウムの総ベクレルは131万7600ベクレルということになり(瓦礫9.5ベクレル/kg×13トンより多い!?)、これが1ヵ所の処分場に埋め立てられるのであれば、キロ当りのベクレル数で安全かどうかという話はほとんど意味を成しません。

また、濃度と総量については新潟県の泉田知事も以下のようにコメントを発表しています。

新潟県:震災がれきの試験焼却実施に関する知事コメント

 本日、三条市と柏崎市から、震災がれきの試験焼却結果が公表されました。
 焼却灰(飛灰)の放射性セシウム濃度は21から49ベクレル/kgとのことでしたが、放射能については、震災前よりも管理基準を緩和すべきでなく、従前に準じて人間社会から隔絶するよう最大限の努力を行うべきと考えております。
 IAEAの基本原則に従えば、混焼による希釈処理は可能な限り避けるべきであり、放射能を含むがれきは、できるだけ、単独で焼却を行い、それによる焼却灰を隔離するべきであります。
 混焼により濃度が下がったとしても、両市合わせて17万から24万ベクレルほどの放射性物質が持ちこまれました。新潟水俣病は、濃度規制しか行わなかったため、総量としての有機水銀が環境中に拡散され引き起こされた悲劇です。このような、歴史に学ぶ対応が必要と考えています。
 県としては、試験焼却による周辺環境への影響を確認するため、引き続き放射線監視をしっかりと行ってまいりたいと考えています。

知事の「水俣病の歴史に学ぶ」という言葉は非常に同感です。

で、繰り返しますが、灰のセシウム濃度では排ガスにどれだけ含まれてどれだけ漏れたか、あるいは全て捕捉できたかというのはわかりません。本来であれば試験焼却によって得られるデータは全て開示し、それを元に安全性を証明する必要があり、それこそが試験焼却の最大の目的です。

なのに先行して灰のセシウム濃度だけを公表してメディアに「基準値以下でした(つまり「安全です」と解釈されるように)」と報じさせるのはなんだかやり方がフェアではないように感じます。

今後、排ガスや周辺環境の数値も公表されるとは思いますが、三条市と柏崎市には安全神話だけが一人歩きすることのないように誠実な対応を望みたいと思います。