新潟市がれき受け入れ説明会

これまで焼却場周辺住民に限定して非公開で行われていた震災瓦礫受け入れの説明会が、初めて新潟市民全員を対象として開催されるということで、昨日NEXT21の新潟市民プラザに行ってきました。

全市民を対象としながらも参加はたったの先着500名とのことで、これはもしかしたら入れないかもしれないと早めに家を出て会場に着いたのが開始30分前。入口で資料を受け取って会場内に入ると人数はまばら。余裕で席を確保し、資料を読みながら開始時間を待つものの・・・・人はさっぱり増えず、ガラガラのまま開始時間になってしまいました。今朝の朝刊では参加80名とのことでしたが、見た感じでは40~50人くらいだったと思います。

あいさつに続いて始まった第1部では「放射線の人体影響と低線量被曝リスク」と題した鈴木崇彦氏による講演。私はこの鈴木崇彦という方がどういう方なのか存じませんでしたが、開始までに資料を読んだ段階でカリウム40とか東京~NY間の飛行機とかCTスキャンとか、御用学者得意のごまかしオンパレードだったので始まる前からまるで聞く気消沈。案の定、被曝による健康被害は心配ないと根拠のない説明を力説しており、講演後の質疑応答では参加者から矛盾を指摘されまくっていました。

休憩を挟んでの第2部では20分ほどのDVDを見せられましたが、新潟市で受け入れ予定なのは岩手県大槌町の瓦礫なのにDVDは宮城県女川町の瓦礫を受け入れる東京都の制作したDVDの使い回し。その後の説明も単にスライドを読み上げるだけで、そこでもまたバグフィルターで99.9%以上セシウムは除去できると利権にくらんだ受け入れ自治体が使っているパターン。その後の質疑応答でもまた参加者からするどいツッコミをされまくっていました。

まぁ、ハッキリ言ってお粗末な説明会でしたよ。

まず説明会の開催告知が不十分。とても「説明会やるので来てください」という姿勢とは思えない、むしろ「できるだけ来ないでほしい」と受け取らざるをえない周知不足っぷりです。全市民に対して500人なんてとても少ないのに、それにすら遠く及ばない参加率は「やった」というポーズだけ示したい市としては成功だったかもしれませんが、市民に広く理解してもらいたいと言うならもっと正々堂々と市民と向き合う姿勢が必要でしょう。

そして第1部で講演した鈴木崇彦氏。彼は完全に御用学者であり、瓦礫焼却に伴うリスクを客観的にジャッジできる人物ではありません。もし鈴木氏を招くのであればそれと同時に危険性を強く持った専門家も一緒に招くべきで、根拠のない安全神話に1時間もかけたのは時間の限られた説明会においては無駄と言うほかありません。市が数ある専門家の中から鈴木氏を選択したのはむしろ信頼を失うこととなったでしょう。

そして第2部で映されたDVD。広い意味で震災瓦礫の現状を伝えるということなら女川町の現状でも構いませんが、新潟市民が知りたいのは受け入れる大槌町の現状であり、それも半年も前の情報ではなく今のもの。一口に被災地と言っても現状はその地域によって異なるし、瓦礫の選別や輸送の方法、放射線の測定方法なども異なるでしょうから、あれでは参考程度にしかならないし、他所の同情を誘うお涙頂戴的な映像を流すより、映像を作る時間やお金をかけられないにしても大槌町の今の写真を見せてくれた方がよっぽど理解できるはず。被災地の力になりたいと思う気持ちは瓦礫受け入れに賛成の人も反対の人も同じなのですから、市はニュートラルに現状を伝えることに徹した方がよかったのではないかと思います。

さらに第2部で続いた瓦礫の受け入れ方法や処理方法の説明。これも単に「安全です」と繰り返すだけで、説明会と言うより説得会ではないかという印象。セシウムはバグフィルターで99.92~99.99%除去できると言いますが、元々バグフィルターは放射性物質の除去を前提に設計されておらず、除去についてはメーカー側も「ムリ」と言っています。他所での実証データとしては除去できるのは6割程度で残り4割は大気中に放出されるという報告もあります。事実、北九州市で試験焼却を行った直後には福岡はもちろんのこと、中国・四国地方や鹿児島まで放射線量が上昇したという話も聞いています。その状態で試験焼却を行い、仮に99%以上除去できればいいですが、4割漏れたとなれば試験どころかそれ自体が汚染を拡大することになるのです。また、排ガスのセシウム濃度も測定すると言ってますが、濃度が基準値以下であっても10トン燃やした時と1万トン燃やした時では同じ濃度でも総量は1000倍差があります。濃度測定すればOKとする市の姿勢はとても放射性物質を管理する素質があるとは思えません。

その他、焼却灰の埋め立てや放流水の管理など、様々な点でずさんさが目立ちます。説明後の質疑応答でも市民に理解してもらおうと言うよりゴリ押しで進めたいという思惑が見え隠れしていました。

私は個人的に瓦礫の受け入れには反対ですが、何もヒステリックに何でもかんでも反対!と言ってるわけではありません。焼却によって放射性物質が漏れ出ることがなく、焼却灰も全て厳重に管理されるのであれば、むしろそれは除染にもなるわけで、それが確実に遂行されるなら賛成に転じます。しかし実際にはそれは不可能であることは明白で、市はそれを隠匿しています。今までの非公開説明会がどうだったのか知りませんが、今回の説明会に来られた方々はみなさん勉強されていて、このようなお粗末な説明会で納得するほとお人好しではありません。ボロはすぐに露呈します。こんなお粗末な内容を正しいと思っているなら不勉強にも程があるし、真実を知りながらこれで市民を丸め込めると思っているなら市民をナメすぎてると思います。そして、そんな姿勢の市にこのような重大な判断を任せることはできず、これを許してしまったら福島第一原発事故と同じようなことがここ新潟でも起こります。

新潟県内各地には福島や関東など汚染された地域から避難されている方が大勢いらっしゃいます。家や仕事を失って、あるいは家族バラバラになって、それでも必死に放射能汚染から逃れようと新潟に避難されているのです。その方々を、二度も放射能の恐怖に陥れようと言うのですか。新潟は福島第一原発の距離から考えたら奇跡とも言える軽微な汚染で済んでいます。諸事情でお父さんを福島に残して新潟に母子避難というご家庭も多いでしょう。そういう方にとって福島の隣県である新潟のできる役割というのは非常に大きいと思います。福島で安心して子供を育てられる環境を取り戻すにはまだまだ長い年月がかかります。できることなら避難したくてもできない人たちに手を差し伸べ、そういう方々が安心して暮らせるようにこれ以上の汚染を防ぐことこそが新潟ができる最大の支援ではないのでしょうか。

新潟は瓦礫ではなく人を受け入れるべき。

市にはもっと人に寄り添う姿勢を持っていただきたいと強く願います。