世界ファースト

シアトルで市内の飲食店に対するプラスチック製ストロー使用禁止の条例が発効されたそうです。

もちろん目的は環境保護。特に最近深刻化している海のプラスチック汚染へ対応することが最大の狙い。ストローやレジ袋などのプラスチック製品は自然分解せず、ゴミとなったプラスチックは海や山にいつまでも残ります。劣化して小さくなったマイクロプラスチックが海洋生物に誤飲されて胃の中がゴミだらけなんていうニュースを見たことがある方も多いでしょう。ストローは製品自体が軽いため機械で分別するのが難しくリサイクルしにくいとも言われています。

本当はストローを使うこと自体をやめれば早いのですが、既にあるものを禁止するというのはなかなか難しいし反発も多い。代わりに「生分解性」のあるプラスチックストローが取り入れられたのですが、この生分解性ストローは一定の温度や微生物を必要とするため自然界で自然分解せず、海に流れてしまえば結果として同じ。そこで現在は紙製のストローに注目が集まっていて、既に紙製ストローへの切り替えを進めている企業もいくつか出てきています。

紙製ストローは以前からあったそうなのですが、漏れやすかったり、紙製に見せて実は中がプラスチックでコーティングされている製品だったりして、実用と環境保護を両立できるストローはなかなかなかったのが、最近は純紙製でも丈夫なストローが製品化されてきて、当然プラスチック製より割高なのがネックではありますが、切り替え可能な環境ができつつあります。

スターバックスやマクドナルドでは段階的に切り替えをしていくと表明していることから、今後は日本でも紙製ストローが使われるシーンが多くなっていくかもしれません。

 

今年の6月、カナダで開催されたG7サミットで「海洋プラスチック憲章」が採択されたのですが、日本とアメリカはこれに署名しませんでした。

日本が署名しなかった理由としては「中国やロシアなどの大国が参加していない憲章では海洋ゴミ削減につながらない」「国内産業への影響が大きいため慎重な調査や検討が必要」ということらしいのですが、なんだか核兵器禁止条約の時みたいな理由ですね。日本もプラスチックゴミの問題は深刻なのですから、他国がどうのと言わずに環境保護に向けた姿勢を積極的に示していかないと世界から取り残されることになります。

アフリカにあるルワンダという国では2008年からビニール袋を使用禁止にしたそうです。ルワンダでもプラスチックゴミによる環境問題は深刻で、海外からの観光客が持ち込んだビニール袋も入国審査で全て没収するという徹底した対策を取ってるとか。この厳しい対応でルワンダ国内に4つあったビニール袋製造工場が潰れてしまったそうで、国の経済を考えれば企業が倒産するのは税収面でも雇用面でも損失がかなり大きいと思いますが、それでも実行してというのは環境保護への真剣度が生半可じゃないということなのでしょう。逆に言えばそれくらいホンキで取り組まないといけないくらいに環境問題は待ったなしということです。

日本はどうもこういう新しい時代への転換が遅い(というかヘタ)な気がします。

原発なんかもそうですね。福島第一原発事故があって、廃炉も難しいし、核のゴミの処分方法も見つからない、世界的にはもう脱原発へシフトしているのに日本は頑なに原発を維持しようとしてるし、海外への輸出も行おうとしている。世界のトレンドと真逆です。脱原発にシフトできない理由は、原発で潤ってる企業や立地自治体が甘い汁を吸い続けたいから。でもホントはそんなこと言ってる場合じゃないし、そんなこと言ってたら永遠に脱原発なんてできません。

再生可能エネルギーや電気自動車なんかでも日本は世界をリードできるだけの技術力があるハズなのに、今や完全に世界から出遅れてしまっています。

一部の利権を守るために全体が滅んだら意味がないんです。シアトルやルワンダはそれがよくわかってるということ。日本にだってできないことじゃありません。

 

もちろん国としての方向性だけでなく、我々一人ひとりの意識も変えていく必要があります。たかが1本のストロー。しかしそれが海に流れ、魚の胃に入り、その魚を自分が食べる、そこまで考えを張り巡らせればたかがストローとは思えないですよね。

レジ袋の削減は結構普及したように思います。マイバッグ持参の方、増えてますよね。短い期間で一気に変えるのは難しくても、一人ひとりの心掛けで少しずつでも変えていければ全体が変わっていくはず。

個人も、国も、「自分ファースト」ではなく「世界ファースト」へシフトしていってほしいものです。