えんとつ町のプペル

お笑い芸人、キングコングの西野氏が自身の絵本作品「えんとつ町のプペル」を無料公開したことが話題になっています。

キングコング 西野 公式ブログ, LINE, お金の奴隷解放宣言。

 

えー、私は彼が絵本作家をしていたことも、絵本の内容も、絵本がバカ売れしてることも知りませんでした。なので、彼のブログに書かれていることのみしかコトの経緯を知りません。

で、2000円の本が買えない子どものために、という思いは評価しつつ、その上で思うことを。

 

以前にも似たような思いを抱いて書いた記事があります。

仕事の対価|D’s note

言いたいことはほぼ同じです。

「お金の奴隷解放」と聞けばとても美談に聞こえるのですが、これは誰もができることではありません。多くの絵本作家は作品を買ってもらうことで生計を立てており、それを無料にしたら生きていけません。

ちょっと意地悪な見かたをすれば、西野氏はお笑い芸人という本業があって、絵本作家を無料でやっても食いっぱぐれることはありません。更に自身の知名度と売れてる絵本の無料公開というインパクトでこれ以上ない宣伝効果を生むことができ、事実、無料公開してからAmazonでの売り上げが急激に伸びたそうです。また、自身の好感度アップという副産物も手に入れることができます。

ホント、意地悪な見かたですね。

そもそも、本人または親にネット環境があるお宅が2000円の絵本買えないの?

いやぁ、ホント意地悪だわ(笑)

でも、コレをやられると絵本作家だけで食ってる人はきっと困るでしょう。「西野がタダで公開してるのにアナタは金取るのか」なんて言う人も出てくるはず。絵本が無料で読めて喜ぶ子どもが増える一方で、その絵本を書く人が生活できずに絵本作家を辞めてしまい、良い作品が生み出されなくなるのでは本末転倒です。

 

画家・ピカソの面白いエピソードにこんなのがあります。

ある日、ピカソがマーケットを歩いていると、手に一枚の紙を持った見知らぬ女性がこう話しかけてきたそうです。
「ピカソさん、私あなたの大ファンなんです。この紙に一つ絵を描いてくれませんか?」
ピカソは彼女に微笑み、たった30秒ほどで小さいながらも美しい絵を描きました。そして、彼女へと手渡しこう続けます。
「この絵の価格は、100万ドルです」
女性は驚きました。
「ピカソさん、だってこの絵を描くのにたったの『30秒』しかかかっていないのですよ?」
ピカソは笑います。
「30年と30秒ですよ」

 

これはクリエイター関係者ではよく知られてる話。

30秒で書ける絵でも、それを書けるまでに多くの努力の積み重ねがあるということ。

前に書いたソプラノ歌手も同じだし、我々のようなデザイナーもデザインを生み出す努力や必要な機材・素材を買ったり表に出ないことはいっぱいあるのです。

 

西野氏が絵本を書くのにもちろん30秒で終わるはずがありません。ストーリーを考え、絵を描いて、それなりの時間と労力を割き、発色を再現するために特殊なインクにこだわったりして、ギリギリに頑張った価格が2000円。

ならば「えんとつ町のプペル」には最低でも2000円の価値があるのですから、そこは無料にせずに2000円で販売し続けた方がいい。もし、それでも2000円出せない子どもにも読んでほしいというならネットで公開するのではなく、2000円という価値は保ったまま絵本を全国の保育園や学校に寄贈すればいい。

才能があって、需要があるならば、その正当な対価は得るべきです。

 

もし、「キングコングのお笑いライブ見たいけどチケット高くて買えない」という子どもがいたら、西野氏は本業であるお笑いのライブもネットで無料公開するのでしょうか?

ああ、また意地悪(汗)

 

西野氏の記事の最後には『他のクリエイターに「西野はタダにしたんだからおまえもしろ」なんて絶対言っちゃダメよ。』と書かれてることから本人もわかった上での英断でしょうから、全てをこれにしろということではなく表現の一つの形として評価したいと思います。