福島の甲状腺がん

先日、いつもの甲状腺がん調査の報告がありました。

昨年暮れの報告からまた増えて、172人確定・57人疑い。

注目すべき点として、原発事故当時5歳だった子どもが甲状腺がんまたはその疑いという結果が出たこと。

福島県の県民健康調査検討委員会は調査の度に「原発事故との因果関係は考えにくい」とお約束のように繰り返してきましたが、その根拠の一つとして「事故当時5歳以下の子どもで甲状腺がんが発見されていない」というものがありました。チェルノブイリでは0歳~5歳の子どもの多くが甲状腺がんになったのに対し、福島では5歳以下の子どもで発見されていないので原発事故が原因ではない、という解釈なんですね。

しかし今回の調査では1人ですが当時5歳の子どもからも発見され、その根拠が覆されるのかと思えば「1人出たからと言って評価を変えることはない」として、またも原発事故との因果関係を認めることはありませんでした。

 

じゃあ何が原因なんでしょうね?

原発事故前から甲状腺がんはあった病気ですけど、事故後から急激に増えているのを客観的に見れば原発事故が原因だと、少なくとも原発事故が原因だと断定はできないが可能性はある、と考えるのが自然なんじゃないかなと思うのですが。

原発事故が原因じゃなかったとしてもこの増え方は正常とは思えないので、原発事故が原因でないならいったい何が原因なのか、その究明をするべきでは?

甲状腺がんの子供の数の変化

 

結局のところ、加害者を特定し、保障・賠償の責任を負いたくない逃げの口実じゃないんですかね。

過去の公害でも同じ事が繰り返されていますし。

新潟水俣病でも未だに認定する・しないなんてモメてるくらいで、責任の所在をハッキリさせるのも大事なんですが、何よりも今苦しんでる人たちを救済し、この先苦しむ人が出ないようにすることこそが最優先じゃないかと思うのですが。何十年も苦しんだ挙句に賠償されても遅すぎですよ。

 

原発事故から5年を過ぎ、チェルノブイリでは5年を過ぎたあたりから健康被害が急増したという話があり、私もそれを危惧してこの5年間ずっと被曝回避を続けていますが、今回の調査では数は増えたものの急増とまでは言えない状況。チェルノ事故当時5歳以下の子どもに甲状腺がんが発症したのは早くても事故から7~8年過ぎてからという報告もあるので、目に見えて増えるのはもう少し先かもしれません。

この前、某SNSで「放射能で騒いでる連中は健康被害が増えてくれないと都合が悪いんだ」みたいな内容を見かけました。私みたいに被曝を気にしてる人がワーワー騒いだもんだから、その通りにならないとバツが悪いってことなんでしょう。

もしかしたら中にはそういう考えの人もいるかもしれませんけど、被曝を気にしてる人で健康被害を望んでる人なんてほとんどいないんじゃないですか?少なくとも私が関わってる人たちの中にはそんな考えの方は一人もいませんし、もちろん私もそんなの望んでなんていません。

事故から5年経って、この先10年20年経ってもたいした健康被害が起きなかったらそれが一番いいに決まってるじゃないですか。

起きるか起きないかわからないから気を付けてるんであって、精神的にも金銭的にも負担のかかる被曝回避をこの先も続けていって、それが結局ムダだったとしても逆の結果になるよりはいいでしょう。ガン保険に入ったからって死ぬまで一度もガンにならなかったら損をしたと思う人、います?

何も起きなければそれがベスト。ただ、わからないから少ない可能性であってもスルーしないで最悪に備える。それだけのことです。

 

福島の検討委員会の皆さんも、そういう気持ちで子どもたちと向き合ってくれたらいいと思うのですが・・・・。